3分でわかる!キャッシュフロー計算書をやさしく解説します
キャッシュフロー計算書について、商社勤務の実務家がやさしく解説!
キャッシュフロー計算書は、よく知らない人も多いかも知れません。
かなり興味深く、決算書を読んでいる人や株に投資している人以外は馴染みが無いかも知れません。
それでも、キャッシュフロー計算書が、重要な決算書の一つである事実に間違いありません。
この記事では、初心者でもキャッシュフロー計算書が、よくわかるようにやさしく解説していきます。
この記事でわかること
- キャッシュフロー計算書の基本がわかります
- 会社のお金の動きがわかります
- キャッシュフロー計算書のしくみと見方がわかります
伊達敦が、キャッシュフロー計算書をわかりやすく解説します。
・商社勤務20年の実務家です
・出版した決算書関連のビジネス書は、海外でも翻訳されています
・主な著書「まだ若手社員といわれているうちに知っておきたい会社の数字」
講談社刊
・中小企業研修協会&中小企業コンサルティング事務所代表
それでは、キャッシュフローについて解説していきます。
キャッシュフロー計算書とは、お金の動きのことです
「キャッシュフロー」とは、ざっくりいうと「お金の動き」のことです。
そして「キャッシュフロー計算書」とは、会社のお金の動きをまとめたデータ表です。
上場企業にのみ作成が義務づけられています。
キャッシュフロー計算書によって、決算の期首にいくらの現金があったのか。
そして、期末にいくら残っているのか、という現金の流れが把握できます
キャッシュフロー計算書を確認すれば、現時点で手元にある現金を把握することができます。
- 会社にキャッシュ(現金など)が入ってくることを「キャッシュ・イン」といいます。
- キャッシュが出ていくことを「キャッシュ・アウト」といいます。
そして、「キャッシュ・フロー」とは、キャッシュ・インからキャッシュ・アウトを差し引いた収支のことです。
キャッシュフロー計算書をイメージしましょう
みなさんの財布の中身をイメージしてください。
サイフには、毎日のようにお金が入り、そして出ていきます。
サイフに入ってくるお金は、預金からの引出しやキャッシングなどでしょう。
一方、サイフからお金が出て行く場合はどうでしょうか。
毎日のお弁当代やタバコ代、お茶代など、さまざまな形で、サイフからお金が出て行きます。
このようにサイフにお金が入ったり、出たりするお金の動きを「キャッシュフロー」といいます。
そして、キャッシュフローがわかれば、当然、現金残高もわかります。
Aさんの「おこづかい帳」をみてみましょう。
Aさんの1ヶ月間のおこづかいは、25,000円。お弁当代15,000円。お茶・タバコ代6,500円。その他の支出が、3,000円です。
Aさんのおこづかい帳をあらわせば、以下のようになります。
1か月のAさんのおこづかい帳
入金 | |
おこづかいの入金 | 25,000 |
出金 | |
お弁当代 | 15,000 |
お茶代・タバコ代 | 6,500 |
その他の支出 | 3,000 |
現在残高 | 500 |
会社のキャッシュフローもおこづかい帳と基本は同じです。
会社の場合は「金庫」をイメージするとよいでしょう。
会社のお金の動きと残高を知るデータがキャッシュフロー計算書(Cash Flow statement)です。
略して (C/F)です。
個人 | おこづかい帳 |
会社 | キャッシュフロー計算書 |
キャッシュフロー計算書の3つの区分
キャッシュフロー計算書は「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの活動区分に分けられます。
キャッシュフロー計算書の3つの活動区分 |
営業活動 |
投資活動 | |
財務活動 |
つぎに各区分をくわしくみていきましょう。
営業活動によるキャッシュフローとは何か
営業活動とは、会社の本業である事業活動のことです。
会社の本業である営業活動から得られたキャッシュが記載されのが、営業活動区分です。
具体的にはつぎの3つがポイントになります。
- モノやサービスの売上による収入
- モノやサービスの仕入による支出
- 社員の給与などの支出
このため、会社の営業力によって、お金を稼ぎ出す力がわかります。
健全な会社であれば、営業活動によるキャッシュフローは、プラスになるはずです。
投資活動におけるキャッシュフローとは何か
投資活動とは、会社の将来を考えた諸活動をいいます。
会社の将来を考えた投資活動のキャッシュの動きが記載されるのが、投資活動区分です。
たとえば、工場の新設などの設備投資や固定資産の売却などがあげられます。
具体的な項目としては、つぎのようなものです。
- 固定資産、有価証券の売却による収入
- 固定遺産、有価証券の購入による支出
投資ですから、この区分は、ふつう収入よりも支出の方が多くなります。
つまり、残高は、マイナスになります。
財務活動におけるキャッシュフローとは何か
財務活動とは、おもに会社の資金調達に関する諸活動です。
この会社の指揮調達を考えた財務活動のキャッシュの動きが記載されるのが、財務活動区分です。
具体的には「営業活動」「投資活動」の2つの活動の資金不足を補うための活動と考えればよいでしょう。
たとえば、投資活動により、不足した資金があれば、銀行から資金を借り入れなければなりません。
財務活動によるキャッシュフローのおもな項目はつぎのとおりです。
- 株式の発行による収入
- 借入金による収入
- 借入金の返済による支出
- 配当金の支払い
キャッシュフロー計算書のおおまかなイメージ
キャッシュフロー計算書の作成方法は2つある
キャッシュフロー計算書の作成方法は「直接法」と「間接法」の2つあります。
直接法とは、営業収入やモノ・サービスにかかわる仕入の支出を総額で表示する方法です。
間接法とは、損益計算書の税引前当期純利益を基準として、いくつかの調整をして表示する方法です。
企業においては、間接法が多いようです。
損益計算書に基づいて作成できる容易さがあるからでしょう。
よく直接法と間接法の違いを質問されます。
キャッシュフロー計算書における直接法と間接法の表示方法の違いは「営業活動区分」のみです。
金額は、当然同じです。
その他の「投資活動」「財務活動」は、直接法も間接法も全く同じですので、注意が必要です。
以下、直接法によるキャッシュフローを参考として、掲載します。
営業活動によるキャッシュフローまでの表示方法が、異なるのみで、その他は同じことがわかります。
キャッシュフロー計算書(直接法)
○×株式会社 ×年3月31日 (単位:百万円)
Ⅰ営業活動によるキャッシュフロー | |
営業収入 | 350 |
モノ・サービスの仕入支出 | △325 |
小 計 | 25 |
法人税等の支払額 | △7 |
営業活動によるキャッシュフロー | 18 |
Ⅱ投資活動によるキャッシュフロー | |
固定資産の売却による収入 | 140 |
固定資産の購入による支出 | △150 |
投資活動によるキャッシュフロ- | △10 |
Ⅲ財務活動によるキャッシュフロー | |
借入金による収入 | 40 |
借入金の返済 | △20 |
財務活動によるキャッシュフロー | 20 |
キャッシュの増減額 | 28 |
キャッシュの増減額期首残高 | 22 |
キャッシュの期末残高 | 50 |
キャッシュフロー計算書(間接法)
○×株式会社 ×年3月31日 (単位:百万円)
Ⅰ営業活動によるキャッシュフロー | |
税引前当期純利益 | 15 |
減価償却費 | 5 |
売上債権の増加 | △5 |
仕入債務の増加 | 20 |
その他の支出 | △10 |
小 計 | 25 |
法人税等の支払額 | △7 |
営業活動によるキャッシュフロー | 18 |
Ⅱ投資活動によるキャッシュフロー | |
固定資産の売却による収入 | 140 |
固定資産の購入による支出 | △150 |
投資活動によるキャッシュフロー | △10 |
Ⅲ財務活動によるキャッシュフロー | |
借入金による収入 | 40 |
借入金の返済 | △20 |
Ⅲ財務活動によるキャッシュフロー | 20 |
キャッシュの増減額 | 28 |
キャッシュの増減額期首残高 | 22 |
キャッシュの期末残高 | 50 |
キャッシュフロー計算書でわかる具体的な事例
【事例1】
A社のキャッシュフロー計算書
営業活動によるC/F |
5,000 |
+ |
投資活動によるC/F |
△3,000 |
― |
投資活動によるC/F |
△2,000 |
― |
A社は、営業活動によるキャッシュフローがプラスです。
つまり、事業が堅調で利益が出ています。
投資活動によるC/Fは、マイナスです。
これは、投資活動を積極的に行っている証左です。
財務活動によるC/Fもマイナスです。
これは、配当金など株主への還元に積極的であることの証左です。
A社は、営業活動によるC/Fが堅調である典型的なキャッシュフロー計算書のパターンです。
【事例2】
B社のキャッシュフロー計算書
営業活動によるC/F |
△4,000 |
― |
投資活動によるC/F |
△1,000 |
― |
投資活動によるC/F |
7,000 |
+ |
B社は、営業活動によるキャッシュフローがマイナスです。
つまり、事業が堅調であるとはいえません。
投資活動によるC/Fも、マイナスです。
財務活動によるC/Fは、プラスになっています。
B社は、借入を行う苦しい経営状況の中、投資をおこない、業務改善を図ろうとしていることがわかります。
【なぜ、キャッシュフロー計算書は重要なのか】についてもっと詳しく知りたい人のために、わかりやすい解説をした記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
キャッシュフロー計算書のまとめ
- キャッシュフロー計算書とは、会社のお金の動きを知るデータ表です
- キャッシュフロー計算書は、「営業」「投資」「財務」の3つの区分に分けられます