資本金がない?!貸借対照表の数字を考える

資本金について、本を出版している著者がやさしく解説します。

会計講座【番外編】として、中小企業研修協会が行ってきた講座を抜粋公開します。
各講座が独立した内容になっています。
気軽に読み物として、楽しんでください。

この記事では、初心者でも資本金について、よくわかるようにやさしく解説していきます。

この記事でわかること

  • 資本金の基本がわかります
  • 資本金と手元現金の動きが、わかります。

著者

伊達敦が、資本金について、わかりやすく解説します。
・商社勤務20年の実務家です
・出版した決算書関連のビジネス書は、海外でも翻訳されています
主な著書「まだ若手社員といわれているうちに知っておきたい会社の数字」
 講談社刊
・中小企業研修協会&中小企業コンサルティング事務所代表

それでは、資本金について解説していきます。


資本金がない?!

まずは、ざっくり貸借対照表の見方を紹介していきます。
貸借対照表は、会社の財産を知るデータ表です。

 B社の貸借対照表は、つぎのとおりです。

B社 貸借対照表  

資産 負債及び純資産
現金 30,000 買掛金 70,000
売掛金 70,000 借入金 50,000
商品 40,000 資本金 80,000
土地 60,500 当期純利益 500
200,500 200,500

さて、あなたに質問です。

このB社の貸借対照表から、すぐに持ち出せる現金は、いくらあるでしょうか?
まず、現金30,000円が、すぐに持ち出せることはわかると思います。

借入金50,000円は、どうでしょうか。

借入金は、銀行から借りてきたお金です。
借入金50,000円が記載されていますから、現金50,000円が、すぐ持ち出せそうです。

さらに、資本金はどうでしょうか。

資本金は、事業を始めるにあたって、株主から出資されたお金です。

資本金80,000円が記載されていますから、これもすぐに持ち出せそうです。

しかし、結論は、借入金50,000円、資本金80,000円ともに、現金として持ち出すことはできません。

なぜでしょうか?

 

この疑問を解決するためには、貸借対照表が作成される過程に着眼する必要があります。
貸借対照表は、会社の財産を表すデータ表です。

実は、貸借対照表には、さらにもう一つの視点があります。

貸借対照表で、「運用」と「調達」がわかる

このもう一つの視点で、貸借対照表をみると、つぎのようなつくりが見えてきます。

                 貸借対照表

資産 負債及び純資産
運用 調達

負債及び純資産には、お金の「調達」であるお金の出処(でどころ)が記載されています。

一方、資産には、お金の「運用」である買ったモノが記載されています。

                 貸借対照表

資産 負債及び純資産
買ったモノ お金の出処(でどころ)

B社の商品や土地は「買ったモノ」です。借入金や資本金は「お金の出処」です。
この視点を理解したうえで、先ほどの資本金についての疑問を考えていきましょう。

B社は、会社設立にあたり株主から現金800万円を出資されたとき、貸借対照表は、つぎのとおりです。

               B社 貸借対照表       (単位:万円)

資産 負債及び純資産
現金           800 資本金        800

株主から出資された現金800万円をつかって、デスク・椅子などの備品30万円を購入しました。
この時点での貸借対照表は、つぎのようになります。

               

B社  貸借対照表     (単位:万円)

資産 負債及び純資産
現金          770 資本金        800
備品           30

さらに現金で、150万円の営業車を購入しました。

営業車は、「車両(しゃりょう)運搬(うんぱん)()」という勘定科目になります。

ここまでの貸借対照表は、つぎのようになります。

               B社  貸借対照表     (単位:万円)

資産 負債及び純資産
現金                    620 資本金        800
備品                     30
車両運搬具              150

さて、ここまでの取引過程で、B社の貸借対照表を見直しましょう。

資本金800万円が記載されていることを理由に「現金800万円が、手元にあるのでは?」

と、質問する人に対し、明確に「ありません」と答えることができるはずです。

これまでの購入過程でわかるように、株主から出資された資本金である現金800万円のうち、すでにデスク・椅子と営業車の購入のために180万円を使っています。
このため、すぐに持ち出せる現金は620万円のみである、という答えになります。

これは、借入金においても同じことになります。

説明が重複しますが、大切な視点なので説明していきます。

B社は、銀行から500万円を借り入れた。

貸借対照表は、つぎのとおりです。

                B社  貸借対照表      (単位:万円)

資産 負債及び純資産
現金                     500 借入金        500

この借入金で、パソコンやコピー機などを60万円で購入しました。
これにより、貸借対照表は、つぎのようになります。

                  B社 貸借対照表      (単位:万円)

資産 負債及び純資産
現金                     440 借入金        500
備品                      60

これまでの購入過程からわかるように、借入金500万円のうち、60万円はパソコンやコピー機の購入に使ったため、すぐに持ち出せる現金は440万円のみとなります。

貸借対照表の右側には、会社が調達した資金明細である資本金や借入金が記載されます。
注意すべきは、資本金も借入金も貸借対照表に記載されている金額を現金として持ち出すことができないということです。

なぜなら、すでに資本金や借入金で、貸借対照表の左側に記載されている備品などを購入しているからです。

つまり、会社にとって、すぐに持ち出せる現金は、基本的に貸借対照表に記載されている「現金」しかないのです。

このような視点で貸借対照表を考えることは、資格学校では、学ぶことができないはずです。
なぜなら、試験に出題されないからです。

資本金がない?!のまとめ

  • 貸借対照表に記載されている資本金の金額が、手元にあるわけではない。
  • 貸借対照表の数字で、すぐに現金化できるのは、事実上、現金と預金残高くらいです。