3分でわかる!労働分配率をやさしく解説します
労働分配率について、
商社勤務の実務家がやさしく解説します
会社で働く社員にとって、自分たちが稼いだお金が、どれくらい給与として支払われるのか?
大変、興味深いところでしょう。
経営者が、よく働いた社員に給与を支払うのは、当然です。
しかし、経営者は、次の事業展開のため、稼いだ利益のうち、何割かのお金を残す必要があります。
事業は、投資と回収の繰り返しです。
労働分配率は、経営者と社員側のお金の意識が交錯するデリケートな経営分析です。
この記事では、初心者でも労働分配率が、よくわかるようにやさしく解説していきます。
この記事でわかること
- 労働分配率の基本がわかります
- 付加価値と人件費の関係がわかります
それでは、労働分配率について解説していきます。
労働分配率とは何か
労働分配率とは「付加価値」に占める「人件費」の割合のことです。
これによって、会社に占める適正な人件費を知ることができます。
会社は、社員がいなければ成り立ちません。
働く社員がいるからこそ、会社は事業を成立させることができます。
経営者は、一生懸命働いてくれる社員に多くの給与や賞与を支払いたい、と考えます。
しかし、事業である以上、稼いだ利益のうち、将来への投資もしなければなりません。
新規事業への投資やパソコンやコピー機の買い替えなどの社内備品の充実も大切です。
稼いだ利益のうち、どのくらいを給与や賞与という形で、社員に還元するか。
これが、人件費に対する経営者の苦悩といえます。
人件費を決定する方法の一つに「労働分配率」があります。
この労働分配率を知るためには「付加価値額」と「人件費」の2つを理解する必要があります。
- 付加価値とは、会社が付(つ)け加えた価値のことです
たとえば、商品を800円で仕入れ、1,000円で売った、とします。
この場合、会社が200円の価値を付け加えたことを意味します。
「付加価値額」とは、ほぼ「売上総利益」と同じと考えて下さい。
人件費は「給与」のほか、会社が負担する社会保険料や雇用保険料の「法定福利費」もあります。
さらに会社が負担する忘年会費用などの「厚生費」を加えた総額になります。
すなわち、社員が、働くうえで欠かせない費用の総額が「人件費」と考えればよいでしょう。
労働分配率の計算式とは
労働分配率の計算式は、以下のとおりです。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値額
例題で、労働分配率を計算してみましょう。
A社のデータは、以下のとおり。 (単位:千円)
付加価値 | 100,000 |
給 与 | 40,000 |
法定福利費 | 6,000 |
厚 生 費 | 2,000 |
上記の場合の労働分配率の計算式は、次のように当てはめることができます。
(給与40,000+法定福利費6,000+厚生費2,000)÷付加価値100,000=48(%)
48,000÷100,000=48(%)
計算された、自社のデータと、類似する業界データを比較してみます。
他社と比較することで、自社の労働分配率のレベルが見えてきます。
労働分配率を知ることで、人件費総額の適正化をはかることができます。
人件費を含めた会社の経費である
【販売管理費及び一般管理費】についてもっと詳しく知りたい人のために、わかりやすい解説をした記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
- 労働分配率で見落としていけないこと?!
労働分配率の全業界の平均は、ほぼ70%〜75%程度です。
わが国の労働分配率おおよそ、70%程度と考えればよいでしょう。
さらに細かく分析すれば、大企業の場合は、50%前後、中小企業だと70%~80%という感じです。
労働分配率は、社員のモラール(勤労意欲)と経営方針との関係を考える必要があります。
給与が高ければ社員のモラールは高まります。
反対に給与が低くなれば、モラールが低くなる、のは傾向として間違いありません。
このため、業績不振でも定期昇給や賞与を通常とおり支払い、モラール維持を図る会社も少なくありません。
社員あっての会社というわけです。
人件費は「将来への投資」というわけです。
労働分配率と経営方針との関係は、数値だけでは見えてこない非常に難しい問題でもあります。
中小企業庁が公表している業界データはつぎのとおりです。
項目/業界 | 全産業 | 建設業 | 製造業 | 卸売業 | 小売業 |
労働分配率(%) | 71.8 | 80.8 | 72.9 | 69.1 | 70.1 |
(出典:中小企業庁)
労働生産性とは何か
人件費を考えるとき、労働分配率ど同時に考えるべきなのが「労働生産性」です。
労働生産性とは、従業員一人当たりがどのくらい付加価値を生み出しているか、
を知る経営分析です。
労働生産性の計算式は以下のとおりです。
- 労働生産性=付加価値÷従業員数
【ちょっとした豆知識 労働分配率編】
・業績連動給与について
業績連動給与について
業績連動給与とは、会社の業績に、役員の給与額を連動させる制度のことです。
経営層へのインセンティブ付与の手段として、成果主義の企業によく見られます。
業績連動給与のメリットは、企業の業績向上が役員の報酬の増額につながることから、役員の企業業績に対する意識と意欲を高めることです。
業績連動給与の計算にも労働分配率の知識が役立ちます。
【速攻チェック問題 労働分配率編】
【問題1】以下の勘定科目のうち、人件費に含まれないものを選びなさい。
① お給料 ② 法定福利費 ③ 接待交際費 ④ 厚生費
【問題2】以下の②に入る語句を書きなさい。
労働分配率(%)= 人件費 × 100
( ② )
【解答1】 ③ 接待交際費は、人件費には含まれません。
【解答2】 ② 付加価値額
(注)付加価値額は、売上総利益とほぼ同じとイメージしてください。
労働分配率のまとめ
- 労働分配率とは「付加価値」に占める「人件費」の割合のことです。
- 労働分配率の計算式 労働分配率(%)=人件費÷付加価値額
- 労働分配率は、経営者、社員ともに影響するデリケートな経営問題である