限界利益とは何か?初心者向けにやさしく解説!【はじめての決算書】
限界利益について、わかりやすく、やさしく解説します!
目次

「限界利益」の文字は、決算書のどこにも記載されていません。
また「変動費」「固定費」という文字も、決算書のどこにも記載されていません。
このため、限界利益、変動費、固定費は、あまり知られていないのかも知れません。
限界利益は、売上高から変動費を差し引いた残額になります。
限界利益を知ることで、たとえば、事業存続の是非などを判断をすることができます。
決算書には、記載されていませんが「限界利益」は、ビジネスでとても役立ちます。
この機会にしっかり身につけましょう!
この記事では、初心者でも限界利益が、よくわかるようにやさしく解説していきます。
この記事でわかること
- 限界利益の基本がわかります
- 限界利益を事例による解説で、わかりやすく解説します。
それでは、限界利益について解説していきます。
限界利益とは何か
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた差額のことです。
計算式は、つぎのとおりです。
売上高ー変動費=限界利益
限界という単語から、英単語の(Limit)をイメージする人は多いかも知れません。
しかし、違います。
限界を英単語で表せば、(marginal)【空白、つまり、原価と売価の開き】の意味です。
つまり、限界利益とは、いわゆる粗利益と同じと考えて問題ありません。
この限界利益は、決算書のどこにも記載されていません。
決算書である損益計算書を使って、限界利益を見つけ出すことになります。
限界利益を見つけ出すためには、変動費と固定費を知る必要があります。
変動費と固定費は、すでに損益分岐点の項目で、説明しています。
しかし、大切な用語ですので、重複を恐れず、説明を繰り返します。
- 変動費とは何か
変動費とは、売上高に比例して増減する費用です。
仕入商品に代表される費用になります。
コンビニに代表される小売業は、商品を仕入れなければ、
お客さんに商品を売ることができません。
また、仕入れた商品は、売り上げに比例して増減します。
これが、変動費です。
- 固定費とは何か
固定費は、売上に比例せず、一定額が定期的に発生する費用です
オフィス賃借料や社員のお給料である人件費は、代表的な固定費になります。
- 変動費と固定費をグラフで、イメージすれば、以下のようになります。

限界利益を見つけ出す方法とは
限界利益を見つけ出すためには、損益計算書にひと手間かけることになります。
具体的には、損益計算書に記載されている費用を固定費と変動費に分解することです。
これを「固変分解」といいます。
具体的にみていきましょう。
まずは、損益計算書をつかって、変動損益計算書を作成します。
損益計算書の費用を固定費と変動費に分解したのが「変動損益計算書」です。
販管費(販売費及び一般管理費)を固定費と変動費に振り分けしています。
費用の固変分解によって、変動損益計算書が作成されています。

限界利益の考え方
繰り返しになりますが、限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた差額です。
計算式は、つぎのとおりです。
限界利益=売上高-変動費
限界利益を図解します。
売上高は、以下のように大きく、変動費、固定費、利益に分解されます。
固定費よりも限界利益が大きければ、利益を稼いでいることになります。
反対に限界利益が固定費よりも小さければ、赤字です。

ビジネスで限界利益を活用する
この限界利益の知識をビジネスで具体的にどう使うか?
興味のあるテーマでしょう。
具体的に見ていきましょう。
コンビニ店をイメージしてください。
カップらーめんを100円で仕入れて、180円で売るとします。
売価180円ー原価100円=80円が利益です。
しかし、このカップらーめんは、180円では売れませんでした。
このため、30円値引きして、150円で売ることにしました。
売価150円ー100円=50円が利益になります。
しかし、150円でも売れないので、
さらに値引きし、100円で売った場合はどうなるでしょうか?
売価100円ー原価100円=0円、利益がなくなります。
これらの計算過程からわかることは、
店舗の賃借料や店員へのお給料である固定費を度外視した計算により、
純粋にカップらーめんは、いくらで売ると、いくら利益を出せるのか?
という疑問が、明確に解決できることです。
売上の際に、変動費(仕入原価)を支払ったのち、利益が稼げているのか?
が、限界利益からわかるのです。
カップらーめんを値引きし150円で、売っても50円の利益が出ます。
このため、カップらーめんの販売は継続してよい、と判断できます。
しかし、100円でしか売れなければ、限界利益が稼げませんから、
カップらーめんの販売は撤退すべきです。
勘定科目分解法
費用を固定費と変動費に分解する固変分解は、さまざまな方法があります。
ここでは、もっともシンプルな勘定科目法を紹介します。
以下の表のように固定費と変動費を勘定科目ごとにざっくり分解する方法です。
この固変分解は、社内用の分析です。
つまり、正式なルールや制度があるわけではありません。
自分たちの会社の実態に沿った分解をすれば、十分です。
売り上げに比例して増減する費用は、変動費にします。
売り上げの増減に関係なく、一定の費用が発生するのが固定費です。
社内の実態に即して、ざっくり、行いましょう。その後、修正をすればいのです。
以下、具体例です。(抜粋)
勘定科目 |
内容 |
変動 |
固定 |
給料 |
社員などに対するお給料 |
|
✓ |
賞与 |
ボーナス |
|
✓ |
法定福利費 |
健康保険料や厚生年金などの会社負担分 |
|
✓ |
福利厚生費 |
社員旅行・社員の冠婚葬祭の慶弔費 |
|
✓ |
広告宣伝費 |
会社や商品の広告代など |
✓ |
|
接待交際費 |
取引先との接待費用 |
|
✓ |
旅費交通費 |
出張時の交通費など |
✓ |
|
賃借料 |
オフィスの賃借料など |
|
✓ |
通信費 |
ネット通信費・切手代・ファックス代など |
|
✓ |
水道光熱費 |
水道代・電気代など |
|
✓ |
限界利益と営業利益の関係を考える
限界利益によって、固定費を度外視したとき、
シンプルにすばやく利益を稼いでいるのか、否か、がわかります。
しかし、現実のビジネスでは、
店舗の賃借料、店員のお給料である固定費を無視することはできません。
このため、売上高から変動費と固定費を差し引いた営業利益をチェックすることになります。
ふつう、営業利益が赤字の場合は、その事業は、撤退などを検討べきと判断するでしょう。
しかし、その事業の限界利益が黒字の場合は、ちょっと違った結論になるかも知れません。
限界利益の4パターンをみていきましょう。
項目/事業部 |
A事業部 |
B事業部 |
C事業部 |
D事業部 |
売上高 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
100,000 |
変動費 |
200,000 |
400,000 |
100,000 |
120,000 |
限界利益 |
800,000 |
600,000 |
0 |
▲20,000 |
固定費 |
500,000 |
800,000 |
400,000 |
600,000 |
営業利益 |
300,000 |
▲200,000 |
▲400,000 |
▲620,000 |
[解説]
A事業部は、限界利益、営業利益ともに利益を生み出している良好な経営状態といえます。
限界利益で、しっかり固定費を回収しています。
B事業部は、限界利益は、黒字です。
しかし、その限界利益で固定費を回収できていません。固定費の見直しが必要です。
C事業部は、限界利益がプラスマイナス0円です。事業活動の存続を問われている状況です。
限界利益がゼロのため、固定費は、発生分だけ赤字になります。
D事業部は、限界利益が赤字です。
この状態では、事業活動を継続させても赤字が増えるだけです。
根本的な事業の見直しが必要です。
これらの事例からわかることは、限界利益が黒字のときは、固定費の一部は回収できる、
ということです。
この視点が、大事です。
会社、支店や営業所、さらには部門別の収支計算において、この点が盲点になりがちです。
すなわち、営業利益が赤字だった。
だから、その事業部門や営業所は閉鎖する、という判断は早急だということです。
限界利益を知ることで、会社の複眼的な収支分析ができるようになります。
限界利益率とは何か
限界利益率とは、売上に占める限界利益の割合のことです。
限界利益率は、以下の計算式になります。
限界利益率(%)=(限界利益÷売上高)×100
2つの事業部を限界利益率をつかって、比較してみましょう。
A事業部 売上高500円 変動費400円 利益100円
B事業部 売上高200円 変動費100円 利益100円
どちらの限界利益も100円です。
限界利益率を加えた表を作成すれば、以下のようになります。
項目/事業部 | A事業部 | B事業部 |
売上高 | 500 | 200 |
変動費 | 400 | 100 |
限界利益 | 100 | 100 |
限界利益率 | 20% | 50% |
限界利益は、A事業部、B事業部ともに100円でした。
しかし、限界利益率に注目すると、A事業部が20%なのに対し、B事業部は50%です。
つまり、B事業部は、A事業部の2.5倍も効率よく利益を稼げる事業部である、という判断ができます。
限界利益までの計算ではなく、限界利益率まで計算することが大事です。
このことで、同じ限界利益でもその実態が大きく異なるということがわかります。
限界利益をつかった目標利益確保のための
売上高の計算方法

限界利益率をつかって、損益分岐点は簡単に計算できます。
限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は以下のとおり。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は、目標利益を確保するときの計算式に
応用できます。
具体的にみていきましょう。
目標利益を確保する売上高の求め方
損益分岐点の計算式は、さまざまな応用計算ができます。
そのひとつが、目標利益を確保するための売上高の計算です。
具体的にみていきましょう。
(固定費+目標利益)÷限界利益率=目標利益を確保すべき売上高
- 目標利益を金額で設定した場合
(例) ・目標利益 200円 ・固定費 1,000円 ・限界利益率 20%
目標利益達成売上高= (1,000円+200円)÷20%=6,000円
- 目標利益を売上高利益率として掲げた場合
(例)・目標利益を売上高利益率5%と設定 ・固定費 1,500円 ・限界利益率20%
目標売上高利益率達成売上高= 1,500円÷(20%-5%)=10,000円
【参考】
限界利益率20%のうち、5%は、目標利益のために確保します。
残りの限界利益率15%で固定費の1,500万円を回収すれば、売上高利益率5%を達成できます。
【損益分岐点】について、わかりやすい記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
限界利益のまとめ
- 限界利益は、売上高から変動費を差し引いた残高です
- 限界利益を知ることで、事業を存続すべきか否かの判断材料になります
- 限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は、つぎのとおりです。
損益分岐点=固定費÷限界利益率 - 目標利益を確保すべき売上高の計算式は、つぎのとおりです。
目標利益を確保すべき売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
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