3分でわかる!限界利益をわかりやすく解説します

損益分岐点のポイントである限界利益について、
商社勤務の実務家がやさしく解説します!

「限界利益」という単語は、決算書のどこにも記載されていません。
また「変動費」「固定費」という単語も、決算書のどこにも記載されていません。
このため、限界利益、変動費、固定費は、あまり知られていない単語なのも知れません。

限界利益は、売上高から変動費を差し引いた残額のことです。
限界利益を知ることで、今後、事業を存続させるべきか、否かの判断をすることができます。
決算書には、記載されていませんが「限界利益」は、ビジネスでとても役立ちます。
この機会にしっかり身につけましょう!


この記事では、初心者でも限界利益が、よくわかるようにやさしく解説していきます。

この記事でわかること

  • 限界利益の基本がわかります
  • 限界利益を事例による解説で、わかりやすく解説します。

それでは、限界利益について解説していきます。

限界利益とは何か

まず、限界利益の単語について説明していきます。
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた差額のことです。

売上高ー変動費=限界利益


限界という単語から、英単語の(Limit)をイメージする人は多いはずです。
これは、誤解です。
限界を英単語で表せば、(marginal)【空白、つまり、原価と売価の開き】の意味です。
いわゆる粗利益のことです。

この限界利益は、決算書のどこを見ても記載されていません。
決算書にひと手間かけて、限界利益を見つけ出すことになります。
限界利益を見つけ出すためには、変動費と固定費を知る必要があります。
変動費と固定費は、すでに損益分岐点の項目で、説明しています。
しかし、大切な用語ですので、重複を恐れず、説明を繰り返します。


  • 変動費とは何か



変動費とは、売上高に比例して増減する費用です。

仕入商品に代表される費用になります。
コンビニに代表される小売業は、商品を仕入れなければ、お客さんに商品を売ることができません。
また、仕入れた商品は、売り上げに比例して増減します。
これが、変動費です。

  • 固定費とは何か


固定費は、売上に比例せず、一定額が定期的に発生する費用です

オフィス賃借料や社員のお給料である人件費は、代表的な固定費になります。

  • 変動費と固定費をグラフで、イメージすれば、以下のようになります。

限界利益を見つけ出す方法とは?

限界利益は、売上高から変動費を差し引いた差額です。

売上高ー変動費=限界利益 

限界利益を見つけ出すためには、損益計算書にひと手間かけることになります。
ひと手間とは、損益計算書に記載されている費用を固定費と変動費に分解することです。
これを「固変分解」といいます。

具体的にみていきましょう。

以下は、損益計算書と変動損益計算書になります。
変動損益計算書とは、損益計算書から、ひと手間かけて作成したものです。

損益計算書の費用を固定費と変動費に分解し、作成したのが「変動損益計算書」です。
販管費(販売費及び一般管理費)を固定費と変動費に振り分けしています。
費用の固変分解によって、変動損益計算書が作成されていることがわかります。

 

  • 限界利益の考え方

繰り返しになりますが、限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた差額です。
計算式は、つぎのとおりです。

  • 限界利益=売上高-変動費

限界利益を図解します。
売上高は、大きく、変動費、固定費、利益に分解されます。
固定費よりも限界利益が大きければ、利益を稼いでいることになります。
反対に限界利益が固定費よりも小さければ、赤字です。

現実のビジネスで限界利益を活用する


この限界利益の知識をビジネスで具体的にどう使うか?
興味のある問題でしょう。


具体的に見ていきましょう。
コンビニ店をイメージしてください。
カップらーめんを100円で仕入れて、180円で売るとします。


売価180円ー原価100円=80円が利益です。

このカップらーめんは、180円では売れませんでした。
このため、30円値引きして、150円で売ったとします。
売価150円ー100円=50円が利益になります。

しかし、150円でも売れないので、さらに値引きし、100円で売った場合はどうなるでしょうか?


売価100円ー原価100円=0円、利益がなくなります。


これらの計算からわかることは、店舗の賃借料や店員へのお給料である固定費を
度外視した計算により、純粋にカップらーめんは、いくらで売ると、いくら利益を出せるのか?
という疑問が、明確に解決できます。

売り上げをあげるため、変動費(仕入原価)を支払ってでも、利益が稼げるのか?
が、限界利益からわかるのです。

カップらーめんを値引きし150円で、売っても50円の利益が出ます。
このため、カップらーめんの販売は継続してよい、と判断できます。
しかし、100円でしか売れなければ、利益が稼げませんから、カップらーめんの販売は撤退すべきです。



  • 勘定科目分解法

費用を固定費と変動費に分解する固変分解は、さまざまな方法があります。
ここでは、もっともシンプルな勘定科目法を紹介します。

以下の表のように固定費と変動費を勘定科目ごとにざっくり分解する方法です。
固変分解は、社内用の分析です。
つまり、正式なルールや制度があるわけではありません。
自分たちの会社の実態に沿った分解をすれば、十分です。
売り上げに比例して増減する費用は、変動費にします。
売り上げの増減に関係なく、一定の費用が発生するのが固定費です。
社内の実態に即して、まずは、ざっくり、行いましょう。
その後、すこしずつ修正をすればいのです。

勘定科目名称

内容

変動費

固定費

給料

社員などに対するお給料

 

賞与

ボーナス

 

法定福利費

健康保険料や厚生年金などの会社負担分

 

福利厚生費

社員旅行・社員の冠婚葬祭の慶弔費

 

広告宣伝費

会社や商品の広告代など

 

接待交際費

取引先との接待費用

 

旅費交通費

出張時の交通費など

 

支払手数料

銀行利用時の振り込み手数料など

 

賃借料

オフィスの賃借料など

 

通信費

ネット通信費・切手代・ファックス代など

 

水道光熱費

水道代・電気代など

 

保険料

火災保険料・損害保険料など

 

減価償却費

資産の価値減少分

 

租税公課

固定資産税や自動車税など

 

消耗品費

コピー用紙・ボールペンの事務用品費など

 

限界利益と営業利益の関係を考える

限界利益によって、固定費を度外視したとき、利益を稼いでいるのか、がわかります。
しかし、現実のビジネスでは、店舗の賃借料、店員のお給料である固定費を無視することはできません。
このため、売上高から変動費と固定費を差し引いた営業利益をチェックすることになります。

常識的に考えて、営業利益が赤字の場合は、その事業は、撤退などを考えるべきと判断するでしょう。
しかし、その事業の限界利益が黒字の場合は、ちょっと違った結論になるかも知れません。
具体例をつかってみていきましょう。


限界利益の4パターンをみていきましょう。

 

項目/事業部

A事業部

B事業部

C事業部

D事業部

売上高

100,000

100,000

100,000

100,000

変動費

200,000

400,000

100,000

120,000

限界利益

800,000

600,000

0

▲20,000

固定費

500,000

800,000

400,000

600,000

営業利益

300,000

▲200,000

▲400,000

▲620,000

 

 

[解説]

A事業部は、限界利益、営業利益ともに利益を生み出している良好な経営状態といえます。
限界利益で、しっかり固定費を回収しています。

B事業部は、限界利益は、黒字です。
しかし、その限界利益で固定費を回収できていません。固定費の見直しが必要です。

C事業部は、限界利益がプラスマイナス0円です。事業活動の存続を問われている状況です。
限界利益がゼロのため、固定費は、発生するぶんだけ赤字になります。

D事業部は、限界利益が赤字です。
この状態では、事業活動を継続させても赤字が増えるだけです。
根本的な事業の見直しが必要です。

 

これらの事例から、限界利益が黒字のとき、固定費の一部は回収できる、ということです。
この視点が、大事です。

会社、支店や営業所、さらには部門別の収支計算において、この点が盲点になりがちです。
すなわち、営業利益が赤字だった。
だから、その事業部門や営業所は閉鎖する、という判断は早急だということです。
限界利益を知ることで、会社の複眼的な収支分析ができるようになります。

  • 限界利益率とは何か

限界利益率とは、売上に占める限界利益の割合のことです。

限界利益率は、以下の計算式になります。

限界利益率(%)=(限界利益÷売上高)×100

  • 限界利益率で、比較してみる

2つの事業部を比較してみましょう。

A事業部 売上高500円 変動費400円 利益100円
B事業部 売上高200円 変動費100円 利益100円

どちらの限界利益も100円です。

限界利益率を加えた表を作成すれば、以下のようになります。

項目/事業部 A事業部 B事業部
売上高 500 200
変動費 400 100
限界利益 100 100
限界利益率 20% 50%

限界利益は、A事業部、B事業部ともに100円でした。
しかし、限界利益率に注目すると、A事業部が20%なのに対し、B事業部は50%です。
つまり、B事業部は、A事業部の2.5倍も効率よく利益を稼げる事業部である、という判断ができます。

限界利益までの計算ではなく、限界利益率まで計算することが大事です。
このことで、同じ限界利益でもその実態が大きく異なるということがわかります。

目標利益確保のための売上高の計算方法

限界利益率をつかって、損益分岐点が簡単に計算できます。
限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は以下のとおり。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は、目標利益を確保するときの計算式に
応用できます。

具体的にみていきましょう。

  • 目標利益を確保する売上高の求め方

損益分岐点の計算式は、さまざまな応用計算ができます。
そのひとつが、目標利益を確保するための売上高の計算です。
具体的にみていきましょう。

  • (固定費+目標利益)÷限界利益率=目標利益を確保すべき売上高

 

  • 目標利益を金額で設定した場合

 [例] ・目標利益 200円  ・固定費 1,000円  ・限界利益率 20

 

  目標利益達成売上高= (1,000円+200円)÷20%=6,000

 

  •  目標利益を売上高利益率として掲げた場合

 [例]・目標利益を売上高利益率5%と設定 ・固定費 1,500円 ・限界利益率20

   目標売上高利益率達成売上高= 1,500円÷(20-5%)=10,000

 

(参考)

限界利益率20%のうち、5%は、目標利益のために確保します。
残りの限界利益率15%で固定費の1,500万円を回収すれば、売上高利益率5%を達成できます。

【損益分岐点】について、わかりやすい記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
 ↓

損益計算書に記載されている【売上総利益】と【5つの利益】について、わかりやすい記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
 ↓

限界利益のまとめ

  • 限界利益は、売上高から変動費を差し引いた残高です
  • 限界利益を知ることで、事業を存続すべきか否かの判断材料になります
  • 限界利益率をつかった損益分岐点の計算式は、つぎのとおりです。
    損益分岐点=固定費÷限界利益率
  • 目標利益を確保すべき売上高の計算式は、つぎのとおりです。
    目標利益を確保すべき売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率

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