3分でわかる!損益分岐点をわかりやすく解説!
事業の損得がわかる損益分岐点について、
商社勤務の実務家がやさしく解説します
損益分岐点とは、損失でもなく、利益でもない、収支トントンのことです。
損益分岐点という言葉が、ビジネスでは定着しています。
しかし、これは、正確にいうと「損益分岐点売上高」といいます。
つまり、損失にも、利益にもならない売上高を「損益分岐点」というわけです。
このサイトでも、ビジネスで定着している「損益分岐点」で表記していきます。
損益分岐点を知ると、事業計画がたてやすくなります。
損益分岐点を知っていれば、利益を出すためには、どれくらいの売り上げが必要か、が具体的にわかるからです。
このため、目標がたてやすく、事業計画も円滑に進みます。
この記事では、初心者でも損益分岐点が、よくわかるようにやさしく解説していきます。
この記事でわかること
- 損益分岐点の基本がわかります
- 損益分岐点の計算式がわかります。
それでは、損益分岐点について解説していきます。
損益分岐点で、損か?トクか?がわかります
損益分岐点とは、売上高と費用の額がちょうど等しくなるときの売上高のことです。
損益分岐点売上高ともいいます。
ビジネスでは、略称で「損益分岐点」といわれます。
売上高と費用の額がちょうど等しい、ということは、利益も損失も出ないときです。
すなわち、損益分岐点とは、利益がゼロのときの売上高をいいます。
損益分岐点を知ることは、事業において欠かせない重要な知識です。
事業である以上、使った経費を回収する最低限の売り上げは、確保しなければなりません。
使った経費すら回収できない売り上げでは、事業の存続自体が危ういと言わざるをえないからです。
言い換えれば、損益分岐点とは、事業存続のため、必要経費を回収する、最低限の売上高である、
ということができます。
ちょっと、損益分岐点を身近な例で考えてみましょう。
あなたは、毎日、電車で出社している、とします。
一日の乗車料が、片道250円、往復500円とします。
1ヵ月の定期券代は、1ヵ月10,000円です。
このとき、毎日、乗車券を購入すべきか?
それとも定期券の購入すべきか?
採算がとれる利用日数は、何日でしょうか?
いいかえると、損益分岐点となる利用日数は、何日でしょうか?
ざっくり、計算してみましょう。
- 定期券10,000円÷500円=20日
あなたは、通勤日数が20日なら、定期券を購入しても、毎日、乗車券を購入しても、
同じ金額を通勤費として支払うことになります。
しかし、20日の出勤日数を超え、かりに21日だとすると、つぎのような計算になります。
毎日の乗車券代(往復) 500円×21日 =10,500円
1ヵ月の定期券代 10,000円
この比較からわかるように、毎日の乗車券を購入するか?定期券を購入するか?
の損益分岐点は、出勤日数が、20日であることがわかります。
あなたは、この出勤日数20日という損益分岐点を知ることで、乗車券か?定期券の購入か?
の判断ができるわけです。
変動費、固定費、変動費率とは何か
それでは、損益分岐点を計算するために必要な会計用語を説明していきます。
損益分岐点を計算するには、つぎの3つの知識が必要になります。
「変動費」「固定費」「変動費率」の3つです。
ざっくり、順番に説明していきます。
- 変動費とは、売上高に比例して増えたり減ったりする費用です。
仕入れた商品などが代表的な例です。
売上が増えるほど、仕入れる商品も増えるからです。
変動費(円)=売上に比例して増減する費用
- 固定費とは、売上高に関係なく発生する費用のことです。
人件費が代表的なものです。社員の給与は売上高に関係なく支払わなければなりません。
その他、販売費や一般管理費も固定費と考えてください。
固定費(円)=売上に関係なく発生する費用
図表で、イメージすると、以下のようになります。
最後に変動費率です。
- 変動費率は、変動費を売上高で割ったものです。
計算式はつぎのとおりです。
変動費率(%)=(変動費÷売上高)×100
これら3つの知識をつかって、損益分岐点売上高は求められます。
損益分岐点売上高の計算式は、つぎのとおりです。
損益分岐点売上高(円)=固定費÷(1-変動費率)
つぎに具体的に採算性を計算してみましょう。
B社のデータは、つぎのとおりです。
損益分岐点売上高はいくらか。
B社のデータ (単位:百万円)
売上高 | 3,000 |
仕入高 | 1,800 |
固定費 | 800 |
B社の損益分岐点売上高は、以下のようになります。
まず、変動費率をもとめます。
変動費率 60%=(1,800÷3,000) ×100
つぎに公式をつかって、損益分岐点売上高をもとめます。
800÷(1―0.6) =2,000円
損益分岐点売上高は、2,000円となります。
B社は、2,000円の売上高があれば、収支トントンの「利益ゼロ」になることがわかります。
つぎに2,000円のときに利益がゼロになるのかを検算してみましょう。
B社の損益分岐点売上高
(単位:百万円)
売上 2,000
仕入※ 1,200
固定費 800
利益 0
※仕入高は、変動費です。つまり、売上高に比例します。
変動費率は60%ですから、売上高2,000円に比例する仕入高は[2,000×60%=1,200]となります。
初学者が間違いやすいところですから要注意です。
このように損益分岐点を知ることで、どのくらい売れば、利益が出るのか、がわかります。
新規事業では、その事業価値や意義が大事な要素なことは間違いありません。
新規事業は、情熱がなければ、うまくいかないからです。
しかし、大前提が必要です。
それは、その新規事業は、十分な収益が稼げるのか、ということです。
会社は、利潤追求の目的集団であることを失念してはなりません。
十分な収益を稼げる計算ができなければ、新規事業は成立しません。
当然ながら、その新規事業が、成功するか?失敗するか?
これは、誰にもわかりません。
この解決策の一つに、その新規事業を実施するか、否かの判断材料に「損益分岐点」があります。
具体的には、その新規事業において、どのくらいの売上高が見込まれるか。
そして、どのくらいの費用の支出があり、どのくらい利益が稼げるのか。
損益分岐点を知ることで、新規事業に代表される事業の損得を判断することができます。
損益分岐点比率とは何か
損益分岐点をつかった経営分析の一つに損益分岐点比率があります。
計算式は、つぎのとおりです。
損益分岐点比率(%)=(損益分岐点売上高÷売上高)×100
この比率は、小さい数字ほど良いことになります。
売上高と損益分岐点の数字が離れているほど、利益を確保しているためです。
反対にこの数字が大きくなるほど、経営は苦しいことになります。
利益が確保しにくい経営状態である、と判断できるからです。
- 安全余裕率とは何か?
なお、100%から、損益分岐点比率を差し引いた数字を
安全余裕率といいます。
たとえば、損益分岐点比率が、80%の場合は、
100%ー80%=20%
安全余裕率は、20%です。
つまり、会社の売り上げが、20%減少しても赤字にならない安全率、ということです。
視点を変えると、売り上げが20%減少すると、赤字に転落する、という意味にもなります。
さらに損益分岐点を学ぶうえで不可欠な知識である
【限界利益】についてもっと詳しく知りたい人のために、わかりやすい解説をした記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
損益計算書に記載されている【売上総利益】と【5つの利益】について、わかりやすい記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
変動費と固定費の業界データを知る
変動費や固定費は、各業界によって、特色があります。
ここでは、中小企業庁が公表しているデータを参考にざっくりした業界データを表記します。
項目/業界 | 全産業 | 建設業 | 製造業 | 卸売業 | 小売業 |
変動費(%) | 74.8 | 81.1 | 78.2 | 83.2 | 73.1 |
固定費(%) | 23.1 | 17.3 | 18.9 | 16.2 | 26.0 |
【ちょっとした豆知識 損益分岐点編】
・損益分岐点を改善する方法
損益分岐点を改善する方法、つまり損益分岐点を下げる方法になります。
大きく2つあります。
- 固定費を減らす。
- 変動費を減らす。
- 変動費を減らす方法
変動費を削減する方法は、商品や材料などを仕入れる単価を下げることです。
ポイントは、売上に貢献度の少ない費用を選別し削減することです。
- 固定費を減らす方法
固定費を減らす方法は、たとえば人件費を削減する手があります。
その他、地代家賃を下げる方法もあります。
【速攻チェック問題 損益分岐点編】
【問題1】つぎの文の①に入る選択語句を選びなさい。
会社の採算性を知るには、つぎの3つの知識が必要になります。
( ① )、固定費、変動費率の3つです。
【選択語句】 営業費、一般管理費、変動費、
【問題2】以下の②に入る語句を書きなさい。
損益分岐点売上高(円)= ( ② )
1ー変動費率
【解答1】 ① 変動費 【解答2】 ② 固定費
損益分岐点のまとめ
- 損益分岐点とは、損でも、トクでもない収支トントンの売上高の地点です。
- 損益分岐点とは、正確には、「損益分岐点売上高」のことです。
- 損益分岐点売上高の計算式 損益分岐点売上高= 固定費÷(1-変動費率)