3分でわかる!税効果会計をやさしく解説します
税効果会計について、
商社勤務の実務家がやさしく解説します!
税効果会計は、やや難しい会計知識になります。
しかしながら、実務上、知っておくと役立つ知識です。
この機会に知っておきましょう!
この記事では、初心者でも税効果会計が、よくわかるようにやさしく解説していきます。
この記事でわかること
- 税効果会計の基本がわかります
- 会計と税法の相違点がわかります
それでは、税効果会計について解説していきます。
税効果会計とは何か
税効果会計とは、法人税等を適切に期間配分し、損益計算書の税引前当期純利益と税金を合理的に対応させる目的でおこなわれます。
専門学校や大学で会計学を学び、ビジネスで活かす、と考える人は多いと思います。
しかし、リアルなビジネスでは、単独で、会計学の知識が活かせる場面は意外に少ないのが実情です。
すなわち、会計学に税法を加えた知識が重要になってきます。
ここでは、その代表的な事例となる税効果会計を簡単に紹介していきます。
損益計算書
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 800 |
売上総利益 | 200 |
販売費および一般管理費 | 50 |
営業利益 | 150 |
営業外収益 | 30 |
営業外費用 | 20 |
経常利益 | 160 |
特別利益 | 20 |
特別損失 | 40 |
税引前当期純利益 | 140 |
法人税、住民税及び事業税 |
70 |
当期純利益 | 70 |
上記は、基本的な損益計算書です。
税引前当期純利益から法人税、住民税及び事業税(法人税等)を差し引き、当期純利益が計算されます。
このとき、法人税等の税金の計算は、税法上の利益に基づいて計算されます。
すなわち、損益計算書は、会計学に税法上の計算が混在した決算書なのです。
この混在部分を理解するために税効果会計の知識が必要になってきます。
実務では、常識です。
しかし、専門学校や大学では、税法での知識であるため、意外に見落としがちな知識となります。
やや難解な会計知識になりますが、しっかりこの機会に学んでいきましょう。
税効果会計を理解するために必要な知識とは?
税効果会計を理解するためには、基本的な用語と基本知識を知っておく必要があります。
知っておくべき、用語と基本知識は以下の通りです。
- 課税所得とは何か
- 税効果会計と損益計算書
- なぜ、会計の利益と税法上の利益は違うのか?
これらは、税効果会計を理解するために、知っておくべき知識です。
それでは「課税所得とは何か」から紹介していきます。
課税所得とは何か
課税所得とは「税法上の会社の利益」をいいます。
法人税等は、税法上の会社の利益に税率を掛けて計算します。
税効果会計は、法人税等を対象にした会計処理になります。
法人税等=課税所得×税率
まずは、法人税等が、どのように計算されるのか、を知っておく必要があります。
税効果会計と損益計算書
税効果会計は、損益計算書を見ながら学ぶと理解しやすくなります。
事例をつかって、具体的にみていきましょう。
【損益計算書①】
法人税30%の場合の損益計算書は、以下のようになるはずです。
損益計算書①
年度 | ×1年 | ×2年 |
税引前利益 | 1,000 | 1,000 |
法人税 | 300 | 300 |
税引後当期利益 | 700 | 700 |
【損益計算書②】
しかし、現実の損益計算書においては、以下のようになるケースが多いのです。
損益計算書②
年度 | ×1年 | ×2年 |
税引前利益 | 1,000 | 1,000 |
法人税 | 450 | 150 |
税引後当期利益 | 550 | 850 |
つまり、税引前利益は同じなら、同じように法人税は30%のはずです。
しかし、単純に1,000×30%=300にならない現実があります。
これは、なぜなのか?
※ 参考に2期合計で、計算してみましょう。
年度 | ×1年 | ×2年 | 2期合計 |
税引前利益 | 1,000 | 1,000 | 2,000 |
法人税 | 450 | 150 | 600 |
税引後当期利益 | 550 | 850 | 1,400 |
2期合計で、見てみると2,000×30%=600です。
法人税等30%の計算が成り立っていることがわかります。
すなわち、単年度ごとで、ズレている法人税等も2期通期で考えると一致するわけです。
ならば、現実の損益計算書②を損益計算書①のような法人税の金額へ修正すればよいわけです。
それが、税効果会計です。
なぜ、会計の利益と税法上の利益が違うのか?
会計の利益と税法上の利益が違う理由は、つぎのようになります。
- 利益は、会計学によって計算されます。
- 税金は、税法によって計算されます。
会計の目的は「適正な期間損益計算」です。
どの会社の計算であっても、正しい利益の計算をする、というものです。
会計上の利益の計算方法は、以下のとおりでした。
収益―費用=利益
税法の目的は、「課税の公平性」です。
すなわち、税金の計算に恣意性を入れない、個々の私情を挟まないということです。
税法上の利益は、以下のようになります。
益金―損金=利益
(注)益金は「税法上の収益」、損金は「税法上の費用」と考えてください。
法人税等は、税法上の計算式である「益金―損金=利益(課税所得)」の利益から計算されます。
適正な期間計算と課税の公平性を考える
それでは、適正な期間計算と課税の公平性を具体的に見てみましょう。
同じ取引先に30,000の売掛金を持つA社とB社について考えてみましょう。
A社は、貸倒引当金を1,000円計上しました。
B社は、貸倒引当金を5,000円計上しました。
A社B社、それぞれ、引当金の計上は、これまでの実務経験から計算されました。
したがって、それぞれが、正しい会計の期間計算を行っているといえます。
すなわち、会計学の理論上、何ら問題はありません。
A社の損益計算書概要
売上 |
30,000 |
貸倒引当金繰入 | 1,000 |
利益 | 29,000 |
B社の損益計算書概要
売上 |
30,000 |
貸倒引当金繰入 | 5,000 |
利益 | 25,000 |
しかしながら、適正な期間計算をしているのですが、A社、B社、それぞれ利益が異なります。
このため、法人税等30%をかける税金も当然ながら異なります。
会計学上は、正しい期間利益ですが、収めるべき税金が異なります。
これは、税法の目的である「課税の公平性」という視点からは、正しい計算とはいえないわけです。
A社の損益計算書概要
売上 |
30,000 |
貸倒引当金繰入 | 1,000 |
利益 | 29,000 |
法人税等30% | 8,700 |
最終利益 | 20,300 |
B社の損益計算書概要
売上 |
30,000 |
貸倒引当金繰入 | 5,000 |
利益 | 25,000 |
法人税等30% | 7,500 |
最終利益 | 17,500 |
税効果会計を考える
さて、ここから損益計算書に税効果会計を表示するケースを考えてみましょう。
A社の損益計算書の×1年と×2年のデータは以下のとおり。
年度 | ×1年 | ×2年 |
税引前利益 | 1,000 | 1,000 |
法人税 | 450 | 150 |
税引後当期利益 | 550 | 850 |
本来は、A社の損益計算書は、以下のようになるべきなのです。
年度 | ×1年 | ×2年 |
税引前利益 | 1,000 | 1,000 |
法人税 | 300 | 300 |
税引後当期利益 | 700 | 700 |
税効果会計によるA社の損益計算書は、以下の通りです。
A社の×1年の損益計算書
年度 | ×1年 | |
税引前利益 | 1,000 | |
法人税等 | 450 | |
法人税等調整額 | ▲150 | 300 |
税引後当期利益 | 700 |
A社の×2年の損益計算書
年度 | ×1年 | |
税引前利益 | 1,000 | |
法人税等 | 150 | |
法人税等調整額 | +150 | 300 |
税引後当期利益 | 700 |
税効果会計は、少し難しいので、一つひとつの用語、論点を整理して、学んでいきましょう。
【利益】についてもっと詳しく知りたい人のために、わかりやすい解説をした記事をご用意しました。
こちらをご参照ください。
参考記事
↓
【参考記事:税効果会計】
会計上の収益と費用、税法上の益金と損金の範囲はほとんど同じです。
しかし、一部ズレがあります。どのようなズレかは、以下のようなものです。
会計上の収益、費用と税法上の益金、損金との違い4パターン。
名称 |
会計学では、 |
税法上では、 |
損金不算入 |
費用に計上している |
損金にならない |
損金算入 |
費用に計上していない |
損金になる |
益金不算入 |
収益に計上している |
益金にならない |
益金参入 |
収益に計上していない |
益金になる |
【参考事例】
項目 |
勘定科目 |
内容 |
損金不算入 |
減価償却費 |
会計上、減価償却費100円を計上した。 |
損金算入 |
貸倒損失 |
会計上の費用として計上されていない災害損失に係る欠損金額70円。 |
益金不算入 |
受取配当金 |
A社がB社に対して配当金100円を出した。A社には法人税が課せられてる。 |
益金参入 |
売上計上漏れ |
売上高のうち、50円分が売上として未計上だったことを税務申告で指摘された場合。 |
税効果会計のまとめ
- 会計の目的は、適正な期間損益計算です。
- 税法の目的は、課税の公平性です。